2026.05.31

地元なのに、知らない道があった。芦別の森で出会った夏の朝

北海道・空知の芦別市。「星の降る里」として知られるこの町に、私は暮らしています。

毎日のように同じ道を通り、見慣れた景色のなかで生活している——そう思っていました。けれどある朝、ふと入った一本の道で、これまで見たことのない芦別の表情に出会いました。

この記事は、特別な観光地の紹介ではありません。地元の人間が、自分の町の「なんでもない美しさ」に、あらためて気づいた朝の記録です。

歌志内から茂尻へ、トンネルを抜けて

その朝、私は歌志内市から茂尻(赤平市)へ抜ける峠道を走っていました。

歌志内も赤平も、かつて炭鉱で栄えた町です。最盛期の賑わいは過ぎ去り、今は静かな緑に包まれています。二つの町をつなぐトンネルは、そんな空知の「時間の流れ」を象徴するような場所でした。

トンネルを抜けると、朝の光が差す森が広がっていました。観光地でもない、ただの峠道。けれど、車を停めずにはいられませんでした。

森に、光が降っていた

車を降りると、虫の声が響いていました。朝の空気はやわらかく、木々のあいだから光が幾筋も差し込んでいます。

見上げると、緑が幾重にも重なり、その隙間から朝日がこぼれていました。何年もこの町に暮らしているのに、こんな景色に出会ったのは初めてでした。

光の筋、揺れる葉、湿った土の匂い。スピードを出して通り過ぎていたら、決して気づかなかった美しさが、そこにありました。

 

「内地から来たのかい?」

森で夢中になって写真を撮っていると、散歩中のおばあちゃんに声をかけられました。

「内地から来たのかい?」

地元の人間です、と笑って答えました。

考えてみれば、不思議な話です。芦別に暮らす私が、芦別の森を撮っていて、観光客に間違えられる。それはきっと、地元の人ほど、この景色を「当たり前」として通り過ぎているからなのでしょう。

何往復も散歩をしているそのおばあちゃんは、この道のことを、私よりずっとよく知っているはずです。地域の魅力は、こうした日々の暮らしのなかに、静かに息づいているのだと感じました。

森の奥へ、続く道

森のなかには、奥へと続く小径もありました。光が差し込む先に、何があるんだろう——そんな想像をかきたてる、静かな道です。

里山の道を行く

森を抜けると、里山のなかをまっすぐ伸びる道に出ました。両側を木々が縁取り、奥には山並みが見えます。電柱に下がる手書きの看板も、この土地の暮らしの一部です。

派手な観光名所ではなくても、地元の人が毎日通る道のすぐそばに、はっとするような美しさがある。それを見つけられるのは、この土地に暮らし、この土地を愛している人間の特権なのかもしれません。

そして、夏の道を駆けるもの

そういえば、撮影をしていると、ライダーが何台か、気持ちよさそうに駆け抜けていきました。空知の道は、走るのが好きな人にとっても、たまらない場所なのかもしれません。

かつて、私もそうでした。今は見送る側になりましたが——通り過ぎていく後ろ姿に、少しだけ、昔の自分を重ねた朝でした。

知っているつもりの町にも、まだ見ぬ景色がある

空知には、まだ言葉にも、写真にもなっていない魅力が、たくさん眠っています。

「また、空知に行きたくなる」。そんな体験を届けるために、これからも、この町の何気ない美しさを、一つひとつ丁寧に切り取っていきたいと思います。


アクセス・撮影メモ
エリア:北海道空知地方(歌志内市〜赤平市茂尻)
時期:6月上旬(初夏・新緑の季節)
おすすめの時間帯:早朝(光がやわらかく、木漏れ日が美しい)

※峠道での撮影は、安全な場所に停車し、交通の妨げにならないようご注意ください。山林では野生動物への注意も必要です。

筆者:

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